「臨床心理士に興味あるんです」と相談される機会が増えました。同業者が増えるのはとても嬉しいです。ただ、私はあえてこんな言葉で返答しています。
「臨床心理士じゃなきゃ、ダメですか?」
ほぼ、2009年の議員さんの言葉ですね。臨床心理士になるには、お金も時間もべらぼうにかかります。その対価は、心理士としての強固な論理と、気品ともいえる業務に対する姿勢の獲得。学びと訓練の場である大学院では、こうした土台づくりの機会は提供してくれるけど、それを生かすかどうかは本人の意識次第になります。語弊を恐れずに言えば、教授は手取り足取り全ての面倒をみてくれません。当事者意識と目的意識がなければ、「大学院ってこんなもんかあ」で終わってしまいます。
生涯学習としての心理学、または現職の仕事に味付けする意味合いの心理学であれば、臨床心理士ではなくても全然よいと思います。
上記の返答の言葉は、私の実体験に基づいています。会社員を辞めて、産業カウンセラーとキャリアコンサルタント資格を看板にした心理領域での起業や、臨床心理士を検討している時に、後に通うことになる大学院のHPに掲載されていた高齢者心理学を専門とする教授にメールでコンタクトしました。お会いしてくれるというので、キャンパスに伺いました。当時の私が考えていた、高齢者の旅行を心理の側面からサポートする取り組みなどを相談すると「やりたいことは臨床心理士じゃなくてもやれそうですね。福祉領域の色が強そうなので、資格を取るなら精神保健福祉士PSWの方がいいかもしれませんね」とアドバイスを受けました。「そうなんだあ…」と思い、そこからもうひと堀り自分で内省して、「俺のやりたいことは高齢者旅行ではなくて、やっぱり臨床心理士になりたいんだな」と決意が固まりました。
否定されて、考え直した時に出てくるこころの声、それがその時点での正解なのだと思います。決断には後悔もつきものですが、気持ちがネガティブに揺らぐことはあっても、ブレずに突き進めることでしょう。
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先日、臨床心理士に興味があると相談してくれた知人から、「その後、色々と考えて、やっぱり臨床心理士を目指すことにしました。予備校に通って受験勉強し、この度、指定大学院に合格しました」と連絡をいただきました。おめでとうございます!同業者として共に切磋琢磨していきましょう。
心理を仕事にするために、全員が臨床心理士に成る必要はありません。何のために、どんな準備が必要なのか。それを実現するのに臨床心理士が一番適しているなら、ぜひこちらへ入らしてください。