心理職は法律を把握しておく必要がある。公認心理師や臨床心理士の資格試験テキストでもその重要性は明記されているし、大学院でも教授から力説された。心理屋として臨床現場に立つようになってから、殊更その意味を痛感するようになった。
「法律」を辞書で引くと、「社会生活を保つために定めた支配的な規範」と定義されている。柔らかい言い方をすれば、つまり法律とは枠である。
何事に対しても枠は大切である。例えば「自由」を考えた時、枠があるから自由を感じられるのであって、枠がなければ自由という概念すら生まれない、無秩序なだけである。臨床で考えると、心理的困難を抱える人は、何かしらの枠に対して不都合が起こって悩みが生じているといえる。その人にとっての枠とは何なのか、また私が支援できる範囲はどこまでなのか、可能性と限界のはざまで関わっていく。
支援の最終的な限界とは法律である。そのキワを把握しておくことが、クライエントの最大福利に資することになり、ひいては心理職自身を守ることにもなる。
心理職が把握すべき法律
まず、全ての法律の基盤は日本国憲法にある。憲法を項点にして、国会で決議される法律、内閣が定める政令、各省の定める省令、国や地方自治体が必要な事項を公示する告示、行政機関で作成される文章形態の通達へと続く。
法律や法制度の全容を網羅するのは難しい。それは法律家に任せよう。臨床家は代表的で頻出されるところを押さえておけばいいと思う。
医療でいえば、医療法・精神福祉保険法あたり。福祉では、社会福祉法・児童福祉法・障害者基本法あたりだろうか。資格試験テキストでは他に、教育基本法・少年法・DV防止法・自殺対策基本法・労働基準法・労働安全衛生法などが強調されている。代表的で頻出されるところだけ…と言っても、かなりの数の法律を把握しておく必要がある。
心理職は専門家である。専門家とはいうなれば、自分の足で立てる人、自分で自分の身を守れる人だと私は思っている。法律を把握することが、その一助になる。