大学院入学直前の2018年3月から「臨床心理士への随録」のタイトルで心理学コラムを書き始めました。内容は、大学院での学び、臨床での気づき、個人の所感などで、資格試験の合格通知が手元に届いた2020年12月までの3年弱で、その数は167本に達していました。

臨床心理士資格を得てからは、タイトルを「ココカリ心理学コラム」に変更し、見習いではなく玄人の構えで、引き続き文筆を重ねてきました。今回のコラムがポスト169本目です。超てきたなあと。直接的に心理学に絡まないエッセイ「日乃心記」シリーズを合わせると、総数350本程を上げています。

よくもまあ6年間も書き続けたもんだなと、我ながらに驚いています。ほぼ毎週1本は書いています。1本1〜2時間くらいは所用するのにもかかわらず。

文章は好きなんですよね。子どもの頃から漫画が好きだし、高校時代は純文学を読み漁り、大学時代も小説やエッセイをせっせと読んでいました。書く方は、元々は思春期にノートの端に淡いポエムを描いたり、海外旅行記を付けるくらいだったけど、パソコンを買ってジオシティーズで写真と日記サイトを立ち上げて、自分のアウトプットに他者が反応してくれる面白さを味わい、社会人になってからはメンバーへのチーム週報を通じて、伝える難しさを学びました。

書くことは臨床場面においても様々な効用をもたらします。

①アウトプット効果

自分の想いや感情が外に出ることで色々な整理がされやすくなります。気持ちの浄化作用も期待できます。

②ディスタンス効果

書き出された文言と自分の間に距離が生じ、客観視しやすくなります。受け止めやすくなります。

③インプット効果

書くことで視覚からも情報確認することになり、記憶に深く定着します。認知や行動変容が促進されます。

こと臨床においてのデメリットは、書くことで悩みやテーマの曖昧さが明瞭になってしまい、自我が脆弱な場合はこれを受け止めきれずに精神が崩れてしてしまうリスクがある、ということでしょうか。セルフで始めるのもいいですが、専門家と共に行うことをお勧めしたいです。

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このコラムを書くことは、大学院時代は臨床の学びを自分の中に血肉化させる効果、心理屋になってからは自分の想いを再確認することで得られるこころの安定化、に一役買ってくれています。この先も永劫に継続するかはわかりませんが、自分にとってデメリットをメリットが上回っている状態のうちは書いていこうと思っています。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。