「モチベーション」をテーマにした講義を依頼され、あらためてモチベーションについて調べてみた。

まずは言葉の定義からだろう。普段何気なく口にしているが、きちんと考えてみると多義的に使っている。「モチベーションが上がらない」は動的な意味合い、「それを継続できるモチベーションってどこにあるんですか」はモノ・コトを指している。辞書で調べてみると、出典によりバラバラ、やはり多義なのだ。以下の説明がしっくりきたので、今日はこの定義で進めてみる。

モチベーションとは、個人が行動を起こす原動力や意欲のことである。心理学や経営学の分野では、モチベーションの向上が個人のパフォーマンスや生産性に寄与するとされている。モチベーションは内発的要因と外発的要因に分けられる。内発的要因は、自己実現や達成感など、個人の内部から生じる動機である。一方、外発的要因は、報酬や評価、制裁など、個人の外部から与えられる動機である。

Weblio辞書

モチベーションの構造

図解すると、このような感じだろうか。

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©️2024 cocoro no cacari

まず「モチベーション源泉」があり、これが燃える材料である(燃えるのに泉とはこれいかに笑)が、これ単体では静的な状態である。これを焚き付ける着火剤としての「動機づけ」がある。掛け合わされることで、材料が燃えてエネルギーになる、これが「モチベーション」、「行動」する原動力になる。

モチベーション源泉

みなさんのモチベーション源泉は何だろうか?イメージしにくい場合は、どのような状況だと頑張れるかとか、何のためなら踏ん張れるかに変換すると、思いつきやすいかもしれない。

私はサッカーを長くやってきたせいなのか、仲間のために役に立ちたい想いが強い。自分の良さ(個性)を伸ばすことで他者やチームに貢献したい。そこを突かれると頑張ってしまう笑。

モチベーション源泉のキーワードとして、心理学で言えば、マズローの欲求階層理論やエリクソンのライフサイクル理論がある。両理論の解説は今回は省略するとして、「生理的欲求」「安全欲求」「親和欲求」「承認欲求」「自己実現」、「希望」「意思」「目的」「有能感」「忠誠心(自分を信じれる力)」「愛」「世話」「賢さ」などはヒントになるだろう。

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マズロー「欲求階層理論」
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エリクソン「ライフサイクル理論」

焚き付ける「動機づけ」

動機づけは2つしかない。外発的動機づけは、行動に伴う賞や報酬に依存する動機づけである。俗にいう「にんじん」だ。内発的動機づけは、賞や報酬に依存しない動機づけである。まずは外発的から始めて、技術で内発的に移行させるエンハンシング効果を狙うといい。動機づけの詳細は過去コラムでご確認いただきたい。

https://note.com/embed/notes/ne4a21bbbcaa7

モチベーションはあるのに行動できない

みなさんこれに頭を悩ますのではないだろうか。かくいう私も同じである。

理由のひとつに「価値の大きさが、行動する<行動しない になっているから」が挙げられる。これは私の話だが、英語勉強が続かないのは、切羽詰まってないからである。来月から海外赴任でビジネス英語もバシバシ使う状況に置かれたら、驚くほど真剣に取り組むはずである。カウンセリングで、先延ばし癖を直したいと訴える方が多くいる。聞いていくと、それでもなんとかなっているのである。なんとかならず致命傷を負った人は、先延ばし癖を止めれている。

緊急度も重要度も低い状態でも行動化したいのなら、行動するメリットを書き出し、行動する価値に重みを加えてみよう。行動する>行動しないに天秤が傾けば行動に移れるだろう。

「悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいのだ」で有名なジェームズ・ランゲは、意欲と行動の関係性について、行動先行説を唱えた。彼ら行動心理学の見地からの「イフゼンプランニング」も行動化に有効な技術である。面倒臭いからやらない、ではなく、面倒臭かろうがそうじゃなかろうがその状況になったらとりあえずやる、思考・感情を停止してやる、そう事前にプランニングして3週間は実行してみるのだ。

https://note.com/embed/notes/n9a58f41e7040

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講義の後半は、コーチングの専門家と対談方式で行った。事例をもとに、コーチ論と心理学の立場から原因分析や対処法を話し合った。行動した時に起こる感情や思考の変遷を書き出しておき、あとで見返すと、やることで得られる充実感を脳内再現しやすく、行動へのモチベーションが更に高まる、という話は然りであった。感じたことは、ひとりで考えていても自分以上の発見は得られない、という当たり前のことで、他者とあれこれ話をすることで、思いもよらなかった方法を知ったり、そういう考え方もあるのかと目から鱗が落ちた。他者との関わりでモチベーションが高まることは多々ある。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。