なるべくご機嫌な状態で日々を過ごしたいと誰もが願う。これを叶えるには、①物事への認知方略、②身体の健康、③疲れのマネジメント、が必要であろう。①は認知行動療法、②は健康診断と適度な運動で対処するとして、今日は「疲れのマネジメント」について考察したい。
疲れとは
疲れとは何か。斉藤(2012)は「人間の疲れとは、心理学的にいえば、生活活動へのモチベーションの減退を基本的内容とする認知現象である。その現象は動機・欲求・感情・記憶・期待などの様々な心理現象が関連しながら変化する。人間の疲れは生活的な意味をもつ生活概念である」と述べている。「疲れ」は物理的量を持たないため主観的な感覚値でしか表せない。自分が疲れていると思えば疲れているし、疲れていないと思えば疲れていないのである。
身体とこころ
人間の疲れを二分すると「身体の疲れ」「こころの疲れ」になると思う。身体の方がこころよりわかりやすい。肩が凝る、だるいなど、症状として出やすいからだ。身体の疲れは、マッサージやストレッチ、軽運動で解消しよう。では、こころはどうほぐせばよいだろうか。
こころの疲れは、主に「将来不安・過去後悔」「生活における人間関係」などがストレスとなって生じる。
将来や過去に対しては、認知行動療法の考え方、すなわち「どうなるか分からない未来を憂いても仕方がない。過去は変えることができない。だから”今この瞬間”に焦点を合わせる。今できることをやることが、過去を活かし未来に繋がる営みになる」を、訓練を重ねることで身につけていきたい。
生活における人間関係は、ストレス・コーピングを活用したい。一本槍ではなくバランスのとれたより多くの自分らしい対処法を開発しておく。コーピング力が高まれば、疲れにくいこころが育っていく。
こころの休め方
こころの疲れが溜まってしまったどうするか。休むしかない。休む一択である。
上手なこころの休め方、まずはストレスから距離をとろう。例えば職場がストレスであれば、休職という手もある。社用のPCもスマホも電源を切る。信頼のおける数名のみ連絡がつくようにして、ストレスを物理的に切り離すのである。思い切りや勇気が必要になるが、元気を取り戻すために断腸の想いで実行したい。
気分障害のような状態に陥っているのなら、休み方に順番があることを知っておこう。「生活リズムを整える」「朝起きて日光をあびてセロトニンを放出する」みたいのは2段階目で行うことである。初手はひたすら身体を休めることであり、この順番を間違えると疲れをとるばかりか、かえって重症化させる危険性もある。心療内科など病院に行かない方もいるが、回復へのガイド役は居たほうが心強い。ぜひ医療を活用していただきたい。
長期休暇のススメ
こころが疲れる前に、長期休暇でこころをリセットできると最高である。
日々の中で、こまめに休みをとることは大切だが、大きく休んで大きな元気を充電することも大切であろう。時間が取れない、お金が心配、いろいろ懸念点はでてくるが、一年間やこの先数年間を健康的に過ごすための活動と思えば安いものである。長期休暇は欧州では当たり前で、フランスでは法制化、ドイツでは文化として根付いている。日本では私が働いていたリクルートはSTEP休暇という制度をもっていた。休みがパフォーマンス向上にどれだけ重要かを証明してくれている。
私の人生で、大きくリセットできた休み経験を思い起こすと、学生時に行ったタイ旅行・ピーピー島で海しか見ない3日間を過ごしたこと、京都一人旅で瀧安寺の石庭を1時間ぼーっと眺め続けたことが挙がる。時間量こそ3日間と1時間で違うものの、キーワードは「余白たっぷり」「お尻の時間に囚われない」であった。こころのメンテナンスに長期休暇は有効である。
ふと、来年の春に夫婦でバリ島に行こうと思い始めた。人のこころを扱う心理士にとって、長期休暇は一番必要な休み方のような気がしてきた。
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