独立開業するオンライン心理カウンセリングの時間枠を考えている。

最初は最終枠を20時で設けようと考えていた。会社勤めの人であれば仕事終わりの時間帯、ニーズは高いだろう。でも待てよ。はたして夜の時間帯に心理カウンセリングをやっていいのだろうか、と立ち止まった。

夜のカウンセリングの代表格は「いのちの電話」だ。24時間やっている。想いが溢れてしまった時の駆け込み寺である。自殺企図や希死念慮は、夜の帷が降りてから湧き起こりがちである。夜闇は「ゆく末の見えなさ」「混沌」などの心情と重複しやすい。いのちの電話はメランコリーなムードを鎮静化させくれる。

さて、私が行うカウンセリングは、こころから生じる問題や困難に対して、心理支援を行うものである。言葉や心理療法を用いて、こころにメスを入れたりぎゅるっと触ったりして、変化を促していく。変化は苦しいものである。

心理カウンセリングは薬にも毒にもなる。毒をもって毒を制すという言葉もあり、毒が改善に至る契機になることは多々あるのだが、毒に侵された場合は、やはり瞬間的には苦しい。この苦しさは日常生活に交じわることで中和される。たとえば病院で行う心理カウンセリングは、診療の時間帯に行われる。遅くても19時までが一般的であろう。病院から帰宅するまでの道のりで、スーパーに寄ったり、人とすれ違ったり、こうした時間がクライエントを現実社会に引き戻してくれる。この作業というか手続きが、実はとても大切なのだ。

これが22時のカウンセリングであったらどうだろう。活性化したこころを中和させる媒介が極端に少なくなる。溢れた想いは行動化への危険性を孕んでくる。

オンラインではこころの機微を対面よりも捉えにくい特徴がある。カウンセラーがクライエントの中毒に気がつけなかった場合を考慮すると、余計にカウンセリング後の日常時間の重要度が高まる。最終枠は18時にしよう。宵闇で店じまいだ。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。

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