「フランス人は10着しか服を持たない(ジェニファー・L・スコットン著)」の一説に、思想家ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉がある。

Life is a journey ,not a destination. 人生は旅であり、目的地ではない。

人生を旅に例えるなら、それは終着点があるわけでも目的地があるわけでもなく、旅の経過そのものが人生というわけだ。

私は、10代から20代半までは、人生を愉しめる余裕なんて全くなかった。自分の人生が怖くて仕方がなかった。旅の意味や目的が欲しかった。

心理学者エリクソンのライフサイクル論を知っていれば、いくらか灯台となってくれただろうか。氏は人間の生涯をライフステージごとに8つの段階に分け、それぞれの段階における課題を示した。当時の私はさしずめアイデンティティの確立の時期で、何も見えない恐怖に慄くのは当然であった。

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出所:「心理学 第3版」鹿取廣人ら編,2010(東京大学出版会) 

こうした理論を示してくれる心理学は私の人生の羅針盤となった。隣接領域の哲学や文学も私を救い導いてくれた。様々な助けを借りながら、なんとかここまで旅を続けてきた。ここから先もどうやら課題だらけのようだが、さて、何が起こるか、みてみよう。人生の意味や目的は未だわからない部分が多いけど、それでも暗中模索と試行錯誤が歩を進める活力になることは理解できた。今やれることに全力を注ぐ、そこだけに集中して、生きていく。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。

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