東京都内にある心療内科で、1年目はパートタイム、その後2年間は常勤として心理士業務を行なってきた。大学院を修了から色々な場所で、パートタイム、業務委託で働いてきたが、病院での常勤は今回が初めてであった。雇用契約で何が違うのか、所感を記録しておきたい。
業務範囲
一番の違いは業務範囲、求められる役割が違うことにある。
大学院の授業で教授から「職場に入ると、心理士は何をする人なのか、何ができる人なのか、周囲の人はよくわかっていない場合が多い。ややもすると心理以外の仕事をしたがらない人という評価をされる。だから、積極的に色々な仕事を引き受けて仲間の輪に入っていけるといい」と言われた。今回やっと「ああ、こういうことか」と合点がいった。
パートタイムや業務委託では心理業務のみを行う契約になっていることが多いが、常勤は「心理もできる運営スタッフ」を期待されるのである。
運営業務は、室内清掃、お使い、受付業務、電話番、院内イベントの手配など多種多様である。組織がどういった仕組みで成り立っているのかを知るにはもってこいの仕事であり、社会人に成りたての方などは社会勉強として経験しておくべきだろう。一方で、心理士としての専門性のみを追求したい人には、この業務範囲に違和を感じるかもしれない。
私が感じた違和感の正体は「資格者上の特性」によるものだったと思う。当院では、医師と心理士はクライエントをもつ専門職で、看護師やPSWはクラエイントを持たない専門職であった。
じゃあ医師も雑務を含めた運営業務を分担してますか?と思ってしまったのだ。
私は最初の1年間をパートタイムで心理専門で仕事したので、余計にそう感じたように思う。常勤の契約時に「これとこれはお願い」と言われた部分は納得していたのだが、蓋を開けてみるとそれ以外の仕事がごまんとあり、正直あてが外れたと感じてしまった。雇用契約を結ぶ際に、何をどこまで行うか、その範囲についてを双方でじっくりと協議しておくべきだった、と反省している。
常勤のメリデメ
メリットは、給料が安定することにある。パートタイムであれば、病欠すればその分の賃金は得られないが、常勤であれば有給制度もあるため収入の変動が少なくなる。社保の一部負担など、金銭面でのそうした恩恵は感じられた。
デメリットは(これは施設によるであろうが)評価制度がないため昇給しないことである。所得を高めたければ、自分で賃金交渉するか、転職するしかあるまい。
総論
どんな働き方でも一長一短であるということ。2つよいことさてないことよ、である。
最近私が感じているのは、業務委託が一番居心地がいいな、ということ。所得の安定であれば「月いくら」で契約すればいいのだ。ただし、業務委託は提供価値に対して契約してくれるものなので、先方のお眼鏡に叶う腕を持つ必要がある。
個人的な観点ではあるが、腕を磨くという意味では、多くの場所で仕事することをお勧めしたい。一箇所だけでは井の中の蛙になる危険性がある。一社終身雇用の時代はとうの昔に終焉している。心理士という仕事は元気があれば何歳までも続けられるし、年長心理士にしか醸せない技もあるわけで、この先を見据えて色々な場所で様々なやり方を体験していくことが、自分自身を豊かに成長させてくれる糧になると思うのである。
新しいことに挑み続けるのは勇気がいるし、エネルギーも必要。けど、現状維持は停滞とほぼ同義であり、新風を入れていかないと成長は見込めない。成長しなければその先の景色は見えない。人生を愉しく過ごすには、常に変化の波に飛び込む必要があるのだろう。
0件のコメント