大学院でお世話になった教授と久しぶりにお会いして、半分ただの飲み会、半分スーパービジョンみたいな時間を過ごした。元気が出たし我道を邁進しようという気持ちになれた。栄養補給って大事だな。

心理を志す人ってどこかクセのある人がいたりして、先生方は学生集団の運営が大変ですねなんて話題になり、そしたら「私は学生ひとりひとりを評価せずに、単純に一個人としてフラットに一律にみてる」なんてことをおっしゃった。ああ、思い返してみると、この先生だけではなく、他の先生方もそういう目をしていたわ。私が感じていた場の居心地の良さの正体はこれだったんだ。

評価をせずに一律にみる。ともすると冷たい印象を受けるかもしれない。しかし、院生の本分は研究であり、我々であれば更に臨床心理士になるための訓練を受けに行ってるわけで、教授から認められようがそうでなかろうが、それはどうでもいいこと。自らの承認欲求のために通学している人は不満であろうが、場に即した態度や姿勢という意味では公正かつ適切である。

記憶を遡って、中学や高校の先生を思い返してみると、彼らは評価を通して学生をみていたと思う。私は中学では割と成績上位で平均児、高校はドベ付近でやさぐれていたので、彼らの目つきの違いを痛烈に覚えている。

ヒトはハロー効果に陥る。ハロー効果(halo effect)とは、ある対象を評価するとき、その一部の特徴的な印象に引きずられた全体評価をしてしまう効果のことで、なぜ出てしまうかというと効率がいいからだ。この人はこういう人と決めつけてしまったほうが、認知機能の稼働を低減できる。そう、楽なのだ。そして、直感や先入観のレッテルというのは、一度貼ると剥がれにくい特性を持ち合わせている。

非合理な認知バイアスを避けるには、最初からレッテルを貼らなければいいのだが、心理士などの対人支援の場では、そうも言ってられない。よっぽどの天才でない限り、出たとこ勝負では歯が立たない。臨床心理士は、まずは事前情報からその人を見立て、それを一度捨ててから面談に入る。ここが素人と玄人との違いである。

はたして私はこれができているのだろうかと、自分で書いてて身が締まっている。スーパービジョン、また受けさせてもらおう、と。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。

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