講義資料を作成していて精神障害の項目になり、大学院時代の授業ノートを久しぶりに紐解いた。先生は前頭葉と統合失調症を専門とする精神科医で、借り物ではなく自分の経験則に基づいた言葉で話をされる方だった。考え方や説明の仕方がユニークで哲学的で、私は授業の度に目から鱗が落ちていた。
人は皆、心因論者である
初回授業の頭にこの言葉を聞かされ、この先生は只者じゃなさそう、授業の内容がおもしろそう、と鷲掴みにされた。精神障害の原因は、外因性(脳に関わるもの、脳以外の身体疾患、それ以外の薬や物理的なもの)、内因性(身体的な要因)、心因性の複合要因といわれる。でもほとんどの人は精神障害を患った時に最初に疑うのは心因、つまり何かしらの悩みのせいでこうなったと考える傾向がある。
妄想と幻覚の違い
精神病理の代表的な症状の「妄想」と「幻覚」の違いについての説明も秀逸だった。この図解で、まるで性質の違うものなのだと理解できた。「思う」と「みえる」は全く別の世界線だ。
人は「自分は変わらない」という原則に立っている
統合失調症の陽性期は、意識晴明なのに、上記の図でいうところの内と外の世界が混乱している状態である。その大変さは容易に想像できる。こんな意味不明な状態に陥った時、人は外界の変化の感じが主となってしまう。自分の中に変化が起こっているのに、それに気がつけずに、自分の外が変わってしまったのだとなる。
自極からの距離
自我意識の異常が主症状の、離人症、強迫性性障害、統合失調症の特徴を、自極からの距離の観点で説明されたのも印象深かった。似てるようで別物だ。
今度、私がおこなう講義で統合失調症について解説するのだが、先生の言葉は使わないようにしよう。これを書いてて自分の言葉になってないのがよくわかった。真似事ではボロが出る。身の丈に合った内容にしようと思う。
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