心理士としてメンタルクリニックと心療内科に勤務してきました。精神科の経験はないのですが、大学病院の老年病科に2年間いて、精神科の方々にお話聞いたり職場を見学したりはしていました。こころを扱う医療科の違いについて、心理士目線で分類してみます。

患者さんCL目線による違い

調子や具合が悪くなってきた時、どの科に診てもらうのが正解か問題があります。基本的には症状が出ている箇所を基準にすればいいと思います。目の痙攣であれば眼科、難聴やめまいは耳鼻科、吐き気・過呼吸・腹痛であれば内科です。器質的な診断をしてもらい、その科での処置で治れば一旦それでいいでしょう。器質的に問題なしと診断され、それでもなお症状が残るなら、症状の原因は器質ではなく精神的なものの可能性が出てきて、メンタルクリニック・心療内科・精神科のお出ましとなります。

こころを扱う3科の違いは何でしょう。私の主観で分類してみました。

まず、医院の雰囲気は、メンタルクリニックが一番カジュアルではないでしょうか。待合室が明るく広々でお洒落な内装だったり。精神病を扱う医療の敷居を下げてくれたのは、新興のメンタルクリニックだったと感じています。

メンタルクリニックと心療内科に大差はないと思います。ココと精神科の間には、重さ深さによる区分けがあるように感じます。「最近ちょっと調子悪いな、精神的な要因の気がする、心当たりあるし。病院行こうかな」であれば、まずはメンタルクリニックか心療内科の受診をお勧めします。

なお、3科の共通事項として、医師や医療スタッフは基本的にみなさん優しいです。調子悪くて来院される方に、傷に塩を塗り込むような対応をする医療従事者はいません。「こんな軽傷で病院来るんじゃねえよ」と言われないか心配される方も多いのですが、ぜひ軽傷で来てください。軽傷であれば、治療効果が早期に効きやすいし、予後もいいんです。安心して早めに門戸を叩いてください。

心理士の役割における違い

上記の分類表で、スタッフの守備範囲の違いを書きました。当然、杓子定規に割り切れない前提によるイメージとしての分類です。

心理士の役割でいえば、メンタルクリニック・心療内科では、適応障害を患った方の社会復帰への支援とか、発達障害をもちながら社会生活されている方の適応促進支援などが多いように感じます。

精神科の心理士には、摂食障害・重度の大うつ病・双極性障害・統合失調症など、病気そのものの大変さや、入院含めた病体水準が重めな患者さんとのやりとりが加わります。精神病理へのより深い理解や専門性が必要となりますし、心理検査もロールシャッハ・テストなどの高度な技が必須となります。

一度就職活動で、地域の機関病院の精神科を受けたことがあるのですが、面接官から「たとえば、自殺未遂で血だらけになって運ばれてくる急患さんに、翌日に心理検査とかもするわけですよ。やれますか?」と質問されました。ああ、こういう臨床現場なんだなと諭された気分でした。

心療内科より精神科の心理士の方が優秀、とかの問題ではありません。指向性でしょう。誰に対して、何を提供したいのか、そのために自分が何を身につけたいのか。これをはっきりと意識できている心理士こそが優秀です。

うーん。書いてて自分の首をしめている気持ちになってきました。自分の指向性を大切にしながら、誰に何を提供し、そのために何を研鑽するのか、あらためて意識したいと思います。

参考:「医療心理学を学ぶ人のために」丹野義彦・利島保 編




cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。

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