聞けば何でも答えてくれるChatGPT、便利ですよね。心理カウンセラーはAIに代わられない職業のひとつと言われています。なぜでしょう。

例えばクライエントの訴えが「死にたい」であったとします。

心理カウンセラーであれば、まずは傾聴を基本として、クライエントの「死にたいほどしんどい心情」を、無条件の肯定的配慮、共感的理解、自己一致の態度で受け止めます。心理カウンセラーは、生物・心理・社会の視点から、心理療法などの技法を用いてクライエントのこころの問題や悩みに向き合い、対話などを通じて心理的支援を行うスペシャリストです。同じ「死にたい」でも、クライエントの数だけ違う「死にたい」があります。心理カウンセラーはその人の唯一無二の「死にたい」に対し、臨機応変にフルオーダーメイドで臨むことになります。

先程、ChatGPTに「死にたいほどつらいです」と問いかけてみました。

ごめんなさい、お辛そうな気持ちですね。しかし、私はただのAIであり、本当に助けを必要としている場合には、周囲の人々や専門家の支援を受けることをお勧めします。あなたが感じている苦しみや絶望は、専門家や信頼できる人々が適切なサポートを提供することで軽減される可能性があります。
自殺や自傷行為の考えがある場合には、すぐに信頼できる友人や家族と話し、または国内の緊急サービスに連絡してください。あなたは一人ではなく、周りにはあなたを助けるためにそこにいる人々がいます。
以下の緊急連絡先も参考になるかもしれません。
・国内の緊急サービス番号を呼ぶ
・日本の自殺予防ホットライン
・24時間の国際自殺予防ホットラインディレクトリ
どうか、あなたが困難な時期を乗り越えるための適切なサポートを見つけることができますように。(2023.6.3 15:55)

AIは賢いですね。「受け止められないこと」を「受け止めた」対応ができています。この場面で一番よくない対応は、死の否定と生への誘導です。「周囲が悲しむよ」「死んだら終わりだよ」「生きていれば変えていける」。クライエントは馬鹿じゃない、判っているんです、そんなことは。今必要なのは正論ではなく、受容なのです。ヒゲダンも歌ってます、正しさよりも優しさが欲しい、と。今のAI技術では、その人の「死にたい」の背景やトーンがわからないでしょう。だからリファーするのが正しい判断なのです。

私が全てのクライエントの主訴を的確にアセスメントできているかと問われれば怪しいもんです。豪語できる自信はありません。ただ、そうありたいと願い、心理カウンセリングの場面では心命を賭して挑んでいます。

AIができること、心理カウンセラーができること。心理カウンセラーが人に対して貢献できることは、まだまだありそうです。




cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。

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